第10回「未来志向の日本語教育」シンポジウム
インバウンド強化を視野に入れた日本語学習支援ポータルの可能性―『日本語ひろば』のアクセス解析を通して―


2025年8月1日に開催された第10回「未来志向の日本語教育」シンポジウム(筑波大学CEGLOC主催)において、筑波大学大学院生・JV-Campus連携室の加藤由紀子氏(発表時)が、「インバウンド強化を視野に入れた日本語学習支援ポータルの可能性―『日本語ひろば』のアクセス解析を通して―」と題して発表を行いました。
「日本語ひろば」の概要と開発の背景
「日本語ひろば」は、日本語教育パッケージのコンテンツを引き継ぎ、2024年10月にリニューアル公開された、JV-Campusの日本語学習支援サブポータルである。同年12月には英語版も公開された。
日本語学習支援と、留学・就職・日本語テストなどの情報提供
日本語教師へのサポート・リソース提供
日本留学・就労を視野に入れた情報発信の拠点化
先行研究と発表の位置づけ
発表では、オンラインで学ぶ海外の日本語学習者の実態調査、公開後の継続的なケア、日本語教師支援に関する先行研究を踏まえた上で、「日本語ひろば」の概要・サイト構成MAPを示し、アクセス解析によって現状把握を行うという構成をとっている。
GA4によるアクセス解析:JV-Campusポータルの現状
Google Analytics 4(GA4)を用いて、JV-Campusポータルサイト全体と「日本語ひろば」のユーザー行動を分析した。JV-Campusポータルサイトでは、2022年4月1日から2025年4月30日までの期間に以下の実績が確認されている。
(累計)
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国・地域数
上記の実績は、JV-Campusが日本の高等教育の国際的な情報発信拠点として着実に機能していることを示している。「日本語ひろば」はこのプラットフォームの日本語学習支援に特化したサブポータルとして位置づけられており、その役割はインバウンド強化の観点からも重要度を増している。
「日本語ひろば」ユーザー行動の分析
「日本語ひろば」の日本語版・英語版の双方について、表示回数・アクティブユーザー・平均エンゲージメント時間・イベント数を分析したところ、両版でユーザーの関心傾向に明確な違いが見られた。
日本語版の傾向
日本語版では、Topページ・日本語レベルチェック・「探す、学ぶ。(Library)」の表示回数が高かった。学習ツールへの直接的な需要が高く、コンテンツを実際に使おうとするユーザーが多いことが示唆される。
英語版の傾向
英語版では、TopページとJapanese Level Checkに加え、「Report 日本語教師インタビュー(知る。)」の表示回数・アクティブユーザー数が際立って高かった。海外ユーザーは学習ツールの利用よりも、日本語教育や日本語学習に関する情報収集を主目的としている可能性が高い。
考察・まとめ
アクセス解析の結果から、「日本語レベルチェック」に対する関心の高さは明らかであるが、実際のエンゲージメント(滞在時間・操作量)との乖離が確認された。利用者がページにアクセスした後、期待したコンテンツを見つけられていないか、操作性に課題がある可能性が示唆される。
また、日本語版・英語版でユーザーの関心傾向が異なることは、ターゲット層の違いを反映していると考えられる。日本語版ユーザーは学習継続者が多く実践的なツールを求める一方、英語版ユーザーは日本語学習や日本留学の情報をまだ探索中のフェーズにある可能性が高い。
「日本語ひろば」は公開から10カ月、英語版は8カ月と日が浅く、現時点のデータのみでサイト改善の方向性を決定するのはまだ早計である。今後も継続的にデータを収集し、ユーザーのニーズをより精度高く把握していくことが必要である。
今後の課題と展望
本発表は、「日本語ひろば」の現状をアクセス解析から客観的に把握し、インバウンド強化を視野に入れた情報提供のあり方を検討するものである。日本語学習支援ポータルが今後も国内外の学習者・教師にとって有用な拠点であり続けるために、データに基づく継続的な改善が求められる。




