「大学×街づくり」で社会は変わるのか?——現場の実践知とアカデミアが交差して見えた、ソーシャルインパクトの核心【JV-Campusレポート】

 

「大学×街づくり」で社会は変わるのか?——現場の実践知とアカデミアが交差して見えた、ソーシャルインパクトの核心【JV-Campusレポート】

2026年1月27日、JV-Campus Crossover Innovation 第1章がオンラインにて開催されました。

今回のテーマは「ソーシャルインパクトを生む総合智」。

「大学が持つ知見は、本当に社会の役に立っているのか?」

「現場の泥臭い実践と、アカデミアの理論はどう融合できるのか?」

筑波大学教授の大庭良介先生と、千葉県松戸市でクリエイティブな街づくり「MAD City」を手掛ける寺井元一さん、そしてファシリテーターに株式会社エムエスディの北島大器さんを迎え、熱い議論が交わされました。

本記事では、そのエッセンスを凝縮してお届けします。

1. アカデミアの挑戦:「教室」から飛び出し、「多文化協創」へ

最初に登壇したのは、筑波大学教育推進部教授であり、ソーシャルインパクト事業の委員も務める大庭良介先生です。

文部科学省が進める「大学の国際化によるソーシャルインパクト創出支援事業」。その背景には、日本の大学教育を海外展開し、外国人留学生と日本人学生が深く関わり合う環境を作りたいという狙いがあります。

住居兼店舗支援

筑波大学が掲げるキーコンセプトは「多文化協創」。教室で隣に座って勉強するだけではなく、社会実装を含む課題解決のプロセスを、国籍や文化の異なる学生たちが「共に」行うことを目指しています。

具体的な実践例:

  • 台湾・台南: ショッピングモール「ららぽーと」の活性化プロジェクト。
  • 茨城・つくば: 農産物直売所「みずほの村市場」での、インド工科大学の学生を交えた農業経営の課題解決。

大庭先生は、「この事業は学生だけでなく、企業にとってもメリットがある」と強調します。共同プロジェクトを通じて、学生の「行動力」や「グローバル環境での適応力」という、面接だけでは見えない能力を可視化できるからです。

そして、その学びの履歴や達成度を「オープンバッジ(電子証明書)」として可視化し、接続するプラットフォームこそが、我らがJV-Campusなのです。

地域プレーヤーの段階的誘致モデル

2. 実践者の流儀:「半径500m」から変える、自治的な街づくり

続いて登壇したのは、NPO法人KOMPOSITION代表理事/株式会社まちづクリエイティブ代表取締役の寺井元一さん。千葉県松戸市の松戸駅周辺エリアを「MAD City」と名付け、独自の街づくりを展開しています。

開催概要

寺井さんのアプローチは非常にユニークです。不動産価値が低いとされる空き家を借り上げ、リスクを取って改装自由な物件として貸し出す。するとそこには、「壁に穴を開けてもいいならアトリエにしたい」というアーティストやクリエイターが集まってきます。

「ただ家賃をもらうだけではなく、入居者と事業をシェアする」。

この関係性から、飲食店や会員制ビジネス、さらにはDV被害者のためのシェルター活用など、多様な事業が自生的に生まれてきました。

多文化共修マイスター制度

寺井さんは、街づくりの人材モデルについてこう語ります。

「誰かに言われた課題を解決する人ではなく、『自分自身がどう生きたいか』という主体性の高いアーティストや起業家が中心にいる。その周りにクリエイティブ層が集まり、さらに彼らを支える専門家が集まってくる」

計画ありきではなく、仮説と検証を繰り返すこの手法は、まさに街全体を使った「社会実験」なのです。

3. クロストーク:アカデミアと現場が交わる「接点」とは?

後半のディスカッションでは、ファシリテーターの北島大器さん(株式会社エムエスディ)が、両者の視点を繋ぎます。

最大の問いは、「海外の優秀な人材に、どうやって日本の地域(街)に定着してもらうか?」。

大庭先生からの「大学のプロジェクトは一時的な関わりになりがち。どうすれば『コア』となる人材になってもらえるか」という問いに対し、寺井さんは次のようなヒントを提示しました。

大学の国際化によるソーシャルインパクト創出支援事業

① 一箇所に縛り付けない、「関係人口」としてのタッチポイント

優秀な人材ほど、一箇所に留まることを嫌います。「住んでくれ」と強制するのではなく、複数の拠点のひとつとして「滞在とリピート」を繰り返す仕掛けを作ること。

② 街を「研究フィールド」として使い倒してもらう

留学生にとって、日本の街が「自分の実験ができる場所」であれば魅力的です。過去には、モンゴルの留学生がリノベーションに参加し、自国の課題解決のヒントを持ち帰った事例もあったそうです。

北島さんが指摘したように、「与えられた課題を解く優等生」ではなく、「自分自身の内なる問い(バーニング・クエスチョン)を持つ変革者」をどう育てるか。ここに、大学教育と現場の実践が融合する大きな可能性が示唆されました。

4. まとめ:JV-Campusが目指す「リアルなコア」への入り口

今回のウェビナーを通じて見えてきたのは、「オンラインの入り口(JV-Campus)」と「リアルの出口(街・現場)」をどう接続するかという視点です。

JV-Campusは、日本の高等教育の国際的な玄関口です。オンラインで学びのきっかけを掴んだ世界中の人々が、日本のリアルな地域(街)を「実験場」として訪れ、そこで多文化協創が生まれる。そんなエコシステムが、ソーシャルインパクトを生み出す鍵になるでしょう。

次回予告:議論は「リアル」な場へ!

さて、オンラインで熱まったこの議論、次はリアルの場へ舞台を移します。

JV-Campus Crossover Innovation 第2章
「未来を拓く教育・ビジネス共創サミット」

日時:
2026年2月20日(金) 15:00〜
場所:
立命館東京キャンパス(東京・丸の内)
テーマ:
AI時代、ソーシャルインパクトを生み出す「両利きの知性」

第2章では、本日の登壇者に加え、Steam Japanの井上祐巳梨さん、デロイトトーマツの吉田圭造さん、筑波大学教授の大庭先生をお招きし、さらに深い議論を展開します。

画面越しでは伝わりきらない熱量を、ぜひ会場で体感してください。

皆様のご参加をお待ちしております!

ウェビナー登壇者

💡 編集後記

「街づくりのコアになるのは、社会課題を解決したい人ではなく、自分自身の課題(どう生きたいか)を持っている人だ」という寺井さんの言葉が印象的でした。JV-Campusも、そんな「個人の問い」を触発するプラットフォームでありたいと感じた1時間でした。