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ヒロシマ被爆の実相 惨禍でのジャーナリストとアメリカ 〜 ロベルト・ユンク(1913-1994)と小倉馨(1920-1979)~

人類史上初めて実戦で原子爆弾が投下された広島と長崎。しかし、被爆による死者数や被害の実態は、日本がアメリカ占領下となる1945年9月以降、日本で報道することが禁止された。占領政策に支障をきたすとの理由からだ。こうした中で、世界にいち早く発信したのがアメリカ人など欧米からのジャーナリスだった。占領軍の許可を得て現地に入った彼らは、その惨状を目にし、当局の反発を覚悟で実態を伝えていく。
従軍記者だったジョン・ハーシーは、1946年8月に「The New Yorker」誌で被害実態を初めて伝えた。アメリカ社会に衝撃が走り、「原爆投下でアメリカ兵100万人の命が救われた」という米政府の公式見解が作られていく。原爆被害の実相を伝えることはまた、ジャーナリズムの役割、体制側とメディア側との葛藤、個々人の良心とは何かを考えるケースとなる。
このプログラムは、被爆の発信に関して、日本の公共放送NHKの国際放送部門であるNHK WORLD-JAPANの番組映像を見ていき、ジャーナリズムの役割、米政府などの体制側の対応の虚実、個人の良心などの問題への理解を立体的に習得していく。

Content/学習内容

  • オーストリア系ユダヤ人でアメリカに亡命したジャーナリストのロベルト・ユンクは1957年、広島に入る。そこで、シアトル生まれで広島移民の子であるカオル・オグラ(小倉馨)と出会う。英語が堪能な小倉の仲介努力によって、ユンクは1959年にスイスで「灰墟の光」を出版。この著作は欧州に大きな衝撃を与えた。そこには体調を崩した被爆者が社会から差別されていた実態が描かれていた。
    さらには、”サダコの折り鶴”としてのちに世界的に有名となる佐々木禎子さんの挿話も盛り込まれていた。佐々木禎子さんは、原爆投下約10年後に白血病と診断され、12歳で亡くなる。禎子さんの突然の死は、被爆による恐ろしさが依然として社会全体に存在していることを世界に伝え、欧米で様々な形で引用されていく。そして、やがてある出会いにも発展していく。原爆投下時の大統領・トルーマンの孫であるクリフトン・トルーマン・ダニエル氏と佐々木禎子さんの兄・雅弘氏との交流である。敵国だった日米市民が、ジャーナリストたちのルポなどによって、憎しみではない交流へとどう進んでいくことができるのか、実例として学ぶことができるケースでもある。

  • Designated TV Programs: NHK WORLD-JAPAN "My Small Steps from Hiroshima"

Staff/スタッフ

    • 講師
    ロバート・ジェイコブス
    広島市立大学
    教授
    • コンテンツ制作
    髙井 孝彰
    国立大学法人筑波大学 広報局
    次長

Competency/コンピテンシー

  • 想像力
  • 状況把握力

専門コンピテンシー

  • ジャーナリズム論
  • 歴史的事象に対する個人の良心

達成目標

  • 被爆の世界発信の実相を体系的に理解することができる。
  • アメリカ政府の原爆投下の正当化はどう形成されたのか理解できる。
  • 日本人以外の原爆犠牲者について理解し、被害と加害」の両側面への考察を行うことができる。
  • 原爆の惨禍に、ジャーナリズムはどう役割を果たしたか、理解することができる。
  • 個人の良心は、政治体制下でどう立ち向かえるか、事例的に理解できる。
  • 怒りと憎しみという戦争がもたらす敵と味方の感情にジャーナリズムがどう役割を果たすか理解できる。

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