
分野 | その他
Climate policy, SDGs and social resilience
- 気候安全保障
- 人間の安全保障
- 社会と文化
- 科学の知と人々の知
現在の気候変動に関わる世界状況を踏まえた気候変動政策(climate policy)にはグローバルな政策もあれば、一方でローカルな政策もある。そしてそれらの主な目標の一つは、私たちが構成する社会が もつ社会的レジリエンス(social resilience)の増進である。
本講義では、社会的レジリエンスとは何か、それをいかにすれば高められるのかについて明らかにすることを目的とする。そこでは気候科学が描く複雑な影響と将来予測に基づくが、トップダウンの政府による諸政策だけでなく、市民参加型のワークショップ等、社会的レジリエンスを高めるためのボトムアップの対話的方法も重要なキーを担うだろう。気候変動対応のためには、政府だけではなく、私たち一人一人が変わっていく必要があり、それをいかにすれば実現できるのかを考える。
Content/学習内容
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気候変動と防災とSDGs
- 仙台防災枠組み
- パリ協定
- 防災
- サステイナビリティ
- レジリエンス
- MDGs
- ウェルビーイング
仙台防災枠組みとSDGsとパリ協定とはいずれも2015年に採択されている。この意義と三者の関係を地球環境政治の観点から概観し、社会的レジリエンスの必要性を解説する
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地球環境に関する政治の文脈
この章では、地球環境政治の出現から1992年のリオ・サミットまでの環境政治の歴史を学ぶ。気候変動が重要テーマになっていく過程を概観する。
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SDGsとその国際的側面
この章で我々は、地球環境政治の流れを持続可能な開発、災害リスクの低減、気候変動、生態系に整理してそれが2015年のSDGsに統合されていく過程を学ぶ。
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仙台防災枠組み・SDGs・パリ協定の相関関係
この章では、2015年に採択された3つの重要な国際的な意思決定である、仙台防災枠組み・SDGs・パリ協定の相関関係について学ぶ。
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蓮井誠一郎
茨城大学 人文社会科学野 人文社会科学領域 教授
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国際政治学からみた社会的レジリエンス
- 社会
- 安全保障
- リスク社会
- 防災
- 復興
社会的レジリエンスの定義と、それが求められる理由を、安全保障概念の拡大という観点から解説する
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レジリエンスとは何かー防災と復旧・復興
この章ではレジリエンスの意味を学び、防災や復旧、復興との違いを学ぶ。またレジリエンス概念の進化についても解説する。
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社会的レジリエンスとその必要性
この章では「社会的レジリエンス」を国際政治学の支店から定義する。リスク社会と言われる現代社会において、なぜレジリエンスが重視されるのかを解説する。
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社会的レジリエンスと気候変動、安全保障の関係
この章では気候変動と社会的レジリエンスの関係を学ぶ。同時に、それが安全保障上の課題となっていることを理解する。
Lecturers
/講師
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蓮井誠一郎
茨城大学 人文社会科学野 人文社会科学領域 教授
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伝統的安全保障と非伝統的安全保障
- ナショナリズム
- 国際協調
- 環境安全保障
- 人間の安全保障
- 気候安全保障
- 安全保障化
安全と安全保障の違いを知り、安全保障概念の拡大について、軍事から気候変動までの変遷を解説する。
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安全と安全保障の違い
安全と安全保障の概念的な相違について理解する。同時に、両者が並立する関係性についても議論する。
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安全保障概念の再定義
伝統的安全保障概念が現実世界に適合しなくなりつつあった中でどのように再定義されたかを議論する。再定義の事例の相違点についても解説する。
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安全保障概念拡大と「レジリエンス」
安全保障概念とレジリエンス概念がどのように変遷し、両者がどのようにして関連付けられるようになってきたかを解説する。
Lecturers
/講師
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蓮井誠一郎
茨城大学 人文社会科学野 人文社会科学領域 教授
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気候変動と人間の安全保障
- マブーブル・ハック
- アマルティア・セン
- 緒方貞子
- 安全保障化
- 予防原則
- エンパワメント
人間の安全保障概念について、その歴史と実践をもとに、それに基づく気候政策の必要性を解説する。
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国家安全保障から個人の安全保障へ
このチャプターでは、人間の安全保障がUNDPから登場してきた背景と人間の安全保障概念自体の説明を行い、気候変動との関係についても触れる。
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包括的アプローチによる人間の安全保障概念の構築
このチャプターでは、包括的なアプローチによる人間の安全保障の概念の構築、安全保障の視野の拡大、このアプローチの進展と課題について論じる。
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人間の安全保障と気候変動政策の交差点
このチャプターでは、人間の安全保障が気候変動政策とどのような関係にあるのか、両者の重なる点に注目して議論をする。
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蓮井誠一郎
茨城大学 人文社会科学野 人文社会科学領域 教授
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気候安全保障論
- エネルギー安全保障
- 食糧安全保障
- 環境難民
- 暴力紛争
- 安全保障化
気候変動がどのように安全保障に影響するのか。国際政治や学術界で展開されている議論をフォローして、その論理を解説する。
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気候安全保障論の登場
このチャプターでは、気候安全保障論がどのように国際政治の場に登場してきたのか、その歴史的経緯を振り返る。
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環境問題が安全保障問題になる論理
このチャプターでは、環境問題がどのように安全保障問題として扱われるようになるのか、安全保障化の過程を概観する。
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全ての安全保障問題の原点となる気候変動
このチャプターでは、気候安全保障が人間の安全保障やエネルギー安全保障、食糧安全保障そして国家安全保障など、現在論じられる全ての安全保障の原点に位置づけられることを明らかにする。
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蓮井誠一郎
茨城大学 人文社会科学野 人文社会科学領域 教授
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気候変動とラオスの不発弾
- UXO
- クラスター爆弾
- 洪水
- 気候変動
ラオスに残る大量のクラスター爆弾の不発弾は、一度処理しても、気候変動により増加する洪水によって、再度流されてくる。気候変動がもたらす思わぬ影響について解説する。
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ラオスの不発弾(UXO)の特徴
このチャプターでは、ラオスでの不発弾汚染にはクラスター爆弾が多く含まれているという特徴と、クラスター爆弾自体のUXOとしての特徴を概観する。
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ラオスの洪水増加と気候変動
このチャプターでは、気候変動によりラオスで増えつつある洪水とその頻度や規模、影響について解説する。
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洪水によって流される不発弾の問題
このチャプターでは、一度除去されても洪水によって再度流れ着くクラスター爆弾の子弾という気候変動影響の二次的影響について、安全保障の観点から解説する。
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/講師
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蓮井誠一郎
茨城大学 人文社会科学野 人文社会科学領域 教授
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気候変動と平和
- 構造的暴力
- 生存基盤
- CRD
- 市民社会
- 気候正義
- ケアの倫理
開発は気候変動を引き越してきた。このレクチャーでは、開発概念の最新バージョンとしての気候に強靱な開発(CRD)について、平和学の視点から批判的かつ建設的に解説する。
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構造的暴力としての気候変動
このチャプターでは、平和学の構造的暴力概念を用いて気候変動影響を暴力の一種として検討し、平和の条件を模索する。
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気候正義と気候安全保障
このチャプターでは、気候正義の観点にケアの倫理を加えた観点から、気候変動影響の偏在という気候正義の問題点を再検討し、我々が関与する必要性を確認する。
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気候変動と平和―気候平和を構想する
このチャプターでは、平和学の観点から、気候変動影響のない状態だけでなく、より積極的な状態を気候平和と捉えてその実現に必要な物事について検討する。
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/講師
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蓮井誠一郎
茨城大学 人文社会科学野 人文社会科学領域 教授
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社会心理学の立場から見たレジリエンス
- 社会
- コミュニティ
- 文化
社会心理学立場からのレジリエンスの定義と、それが求められる理由を解説する
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レジリエンスとは何か:防災と復旧・復興
レジリエンスとは何かを解説し、防災と災害からの復旧・復興でそれがどのような機能を果たすのかを解説する。
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社会的レジリエンスは何によって決まるのか
社会的レジリエンスは何によって決まるのか、むしろ柔軟性、柔らかい強さがポイントであることを解説する。
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気候変動適応と社会的レジリエンスとの関係
気候変動適応の問題で社会的レジリエンスがどう機能するのか、それらの両者の関係を元に論じる。
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伊藤哲司
茨城大学 人文社会科学野 人文社会科学領域 教授
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気候変動に関わる科学の知と人々の知
- 人々の知
- ローカリティ
気候変動に関わる科学的知見が有益であり重要であると同時に、人々が抱いている知もまた注目に値することを解説する。
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科学の知と人々の知と地域性
このセクションでは、科学の知と人々の知について解説し、それぞれに基づくトップダウンアプローチとボトムアップアプローチついて理解を深める。
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自然科学の方法論と人間科学の方法論
自然科学と人間科学の方法論(発想やアプローチなど)の違いを解説し、両者とも必要であることを解説する。
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2つのアプローチによる統合モデルの創出
トップダウンアプローチとボトムアップアプローチ両方による統合モデルの創出について解説する。
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伊藤哲司
茨城大学 人文社会科学野 人文社会科学領域 教授
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気候変動の現場を歩く
- ローカルな視点
- ボトムアップ
フィールドワークによってローカルな視点を知り、そこに基づいて気候変動の問題をとらえるやり方を解説する。
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フィールドワークの方法論
社会心理学などにおけるフィールドワークの方法論について解説し理解を促す。
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フィールドワークの事例(1):茨城県大子町
気候変動に関わるフィールドワークの事例として、茨城県大子町でのものを映像で紹介する。
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フィールドワークの事例(2):ハノイ・フクサー地区
気候変動に関わるフィールドワークの事例として、ベトナムのハノイ・フクサー地区でのものを映像で紹介する。
Lecturers
/講師
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伊藤哲司
茨城大学 人文社会科学野 人文社会科学領域 教授
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コミュニティに根ざした気候変動適応とは
- コミュニティに根ざした適応
気候変動適応は、コミュニティに根ざしたものとして取り組む必要がある。そのような実例としてどのようなものがあるのかを解説する。
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コミュニティとは何か
自明のようでいて自明ではない「コミュニティ」、それが何なのかについて考察し浮き彫りにする。
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適応とは何か
自明のようでいて自明ではない「適応」、それが何なのかについて考察し浮き彫りにする。
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気候変動とはどのような問題なのか
気候変動とはそもそもどのような問題なのか、社会文化的な側面も含め多面的に検討する。
Lecturers
/講師
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伊藤哲司
茨城大学 人文社会科学野 人文社会科学領域 教授
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気候変動適応に関わる対話的なワークショップの技法:対面の場合
- 対面
- ローカリティ
気候変動適応に関わる知を共有するための対話的ワークショップ(対面の場合)の技法を学ぶ。
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対話的ワークショップとは何か
対話的ワークショップとは何かについて解説し、理解を深めてもらう。
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「語りマップ」を活用したワークショップ
オリジナルのツールである「語りマップ」について紹介し、それを活用したワークショップがいかに可能にすることができるかを解説する。
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コミュニティのナラティブを豊かにしていくこと
コミュニティのナラティブを豊かにしていくことが、コミュニティ再生の鍵であることの理解を促す。
Lecturers
/講師
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伊藤哲司
茨城大学 人文社会科学野 人文社会科学領域 教授
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気候変動適応に関わる対話的なワークショップの技法:オンラインの場合
- オンライン
- インターローカリティ
気候変動適応に関わる知を共有するための対話的ワークショップ(オンラインの場合)の技法を学ぶ。
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/学習動画
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オンラインの良さを活かす
対話的ワークショップをオンラインで行う場合、オンライン故の良さをどう活かせるのかを考える。
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ワークショップを企画する
ワークショップを実際に企画するときのポイントについて解説する。
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インターローカルな知の創出
オンラインを使った地理的制約のないワークショップを開催し、いかにインターローカルな知を創出するかについて考察する。
Lecturers
/講師
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伊藤哲司
茨城大学 人文社会科学野 人文社会科学領域 教授
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「物語」が人々の気候変動に関わる態度や行動を変える
- 態度
- 行動
人々の態度や行動を変えるのは、科学的なエビデンスだけでなく、人々が抱く「物語」であることを解説する。
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論理実証モードと物語モード
人間が持つ論理実証モードと物語モードのそれぞれの特徴について解説する。
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「物語」はなぜ人を変えるのか
科学的エビデンスにもまして物語が人を変えることがあるのはなぜか、そのことについて解説する。
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小さな物語が世界を変える
世界を変えるために大きな物語を作り出す必要は必ずしもない。小さな物語が世界を変えうることについて考える。
Lecturers
/講師
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伊藤哲司
茨城大学 人文社会科学野 人文社会科学領域 教授
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気候変動適応のトップダウンアプローチとボトムアップアプローチ
- ボトムアップアプローチ
- 統合
トップダウンアプローチとボトムアップアプローチ、およびその統合について、講座担当者(蓮井・伊藤)が対話する。
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統合的アプローチに向けて
人文社会科学の立場からの統合的アプローチついて対談で浮き彫りにする。
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社会実装と社会浸透
社会実装という言葉がよく使われるが、人々の間に浸透するという含意の社会浸透という概念を提唱する。
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人文社会科学が果たす役割
本講義のまとめとして、人文社会科学が果たす役割について語りあう。
Lecturers
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蓮井誠一郎
茨城大学 人文社会科学野 人文社会科学領域 教授
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伊藤哲司
茨城大学 人文社会科学野 人文社会科学領域 教授
Staff/スタッフ
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蓮井誠一郎茨城大学 人文社会科学野 人文社会科学領域教授経歴
2022年 – 現在 茨城大学地球・地域環境共創機構(GLEC)副機構長(教育構想・SDGs)
2020年 – 2022年 茨城大学地球・地域環境共創機構(GLEC)機構長
2020年 – 2024年 茨城大学学長特別補佐(SDGs推進)
2018年 – 現在 日越大学大学院気候変動・開発プログラム客員講師
2013年 – 現在 茨城大学人文社会科学部教授 -
伊藤哲司茨城大学 人文社会科学野 人文社会科学領域教授経歴
2006年-現在 茨城大学人文社会科学部 教授
2018年-現在 日越大学大学院気候変動・開発プログラム客員講師
2014年-2020年 茨城大学地球変動適応科学研究機関(ICAS)機関長
Competency/コンピテンシー
科目の目標
・気候変動と社会的レジリエンスに関する知識を身につける
・社会的レジリエンス構築に向けた課題分析能力を養う
・気候変動政策と適応の推進に向けた意欲、態度を喚起する
履修者の到達目標
小テスト、レポートを通じてルーブリックで評価する(自由記述参照)。
・気候変動と社会的レジリエンスに関する知識
・気候変動の社会的レジリエンス向上に向けた課題分析能力
・気候変動の社会的レジリエンス向上に向けた意欲や行動力
Information/その他の情報
教材・参考文献
IPCC (2022) Climate Change 2022: Impacts, Adaptation and Vulnerability, Contribution of Working Group II to the Sixth Assessment Report of the IPCC.
Ito,T., M.Tamura, A.Kotera, Y.Ishikawa-Ishiwata (eds.) (2022) Interlocal Adaptations to Climate Change in East and Southeast Asia: Sharing Lessons of Agriculture, Disaster Risk Reduction, and Resource Management, Springer.
Contact/お問合せ先
tenkai@m.ibaraki.ac.jp