分野 | ビジネス・経営
田舎×持続可能性でブランド化する愛媛と世界の経済学
- 6次産業化
- ブランド化
- 地方活性化
持続可能な社会と食の安全保障を実現するためには、その根本的な原因の1つである都市と地方の格差を縮小することが不可欠である。そして、都市・地方間の格差を是正する上で、食料生産者の大多数を占める地方の小規模農家、家族農家の経営の底上げがなされなければならない。日本は、その成功例として海外から注目されることが少なくない。しかし、地方の側からの具体的な分析や説明は、日本語以外の文献において、ほとんどない。
本講義では、日本の一地方である愛媛県の事例を取り上げ、時に海外の状況と比較を交えつつ、市場競争において不利な状況に置かれている日本の地方が、その不利な条件を克服するため産官学民を挙げて取り組んできた日本独自の地方活性化の戦略について学ぶ。
本講義では、世界的に周知されているフード・バリュー・チェーンの概念を用いて、小規模農家に焦点を当てた独自性の強い日本の地方活性化戦略について学ぶ。経済学における市場に対する政府や外部組織の役割について確認した後、産官学民が一体化した日本独自の地方の活性化戦略を、その意義や効果について、学術的説明に加えて豊富な事例やバーチャル視察を通して学ぶ。
本講義は主に3つのスタイルから学ぶ
1)分析ツール・概念および現状:バリュー・チェーン、フード・バリュー・チェーン、市場と政府の役割、ブランド化、6次産業化、日本の地方・農業現況を学習
2)バーチャル視察:バーチャル視察により、ブランド化の基盤となる地方の魅力を実感
3)事例の紹介・分析:魅力的な事例を紹介し、フードバリューチェーンの分析手法を通して分析
Content/学習内容
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ここで学べること:私たちの共通の未来のために学ぼう!
- 環境問題
- 貧困/社会的格差
講義の目的と構成、そして、それぞれの講義の学習ポイントについて学ぶ
Videos
/学習動画
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イントロダクション&世界の緊急課題
世界の緊急課題として、戦争・紛争、環境問題、貧困・社会的格差の3つが挙られ、それらが被害を拡大させ、私たちの社会の存亡を脅かしていることを学ぶ
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悪循環と都市-農村間格差
上記3つの問題が相互に強化し合う悪循環に陥っていることを学ぶ。そして、その解決のために、日本の都市-農村間格差を解決する取り組みが大きな示唆を与えうることを学ぶ。
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講義のロードマップ
それぞれの講義での学びのポイントを知ることで、今後の講義を大きなロードマップの一部として理解する
Lecturers
/講師
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栗田英幸
愛媛大学 国際連携推進機構 准教授
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フード・バリュー・チェーンとは?
日本特有の課題を理解するための分析ツール- フード・バリュー・チェーン
- ブランド化
- エシカル商品
- 地方政府
一連の講義では、日本の農村地域および地域が主導するブランド化戦略の独自性を理解するためのツールとして利用する、世界中で利用されているフード・バリュー・チェーンの分析概念について学ぶ。
Videos
/学習動画
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バリューチェーンとは?
バリュー・チェーンはその用途によって多様な姿を持つ。ここでは、まず、フード・バリュー・チェーンの原型となっている経営学におけるマイケル・ポーターのバリュー・チェーンについて学ぶ。
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フード・バリュー・チェーン基礎
本講義では、フード・バリュー・チェーンを3つの次元から学ぶ。
第二部では、3つのうちの2つの次元を学ぶ。1つは、主要活動と呼ばれるセクターそれぞれで追加される付加価値活動、1つは、サポート活動と呼ばれるそれぞれのセクター内部での付加価値活動。 -
フード・バリュー・チェーン応用
3つ目の次元として、社会や自然環境への貢献による付加価値活動である。ここでは、エシカル商品を事例として取り上げた。
Lecturers
/講師
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栗田英幸
愛媛大学 国際連携推進機構 准教授
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フード・バリュー・チェーンを通じた様々な農家の把握
- 自家消費志向型農業
- 市場志向型農業
- 現代型農業
Videos
/学習動画
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自家消費志向のフードバリューチェーン:モザンビーク
第1のタイプである自家消費志向型の農家として、モザンビークの一般的な農家とそのFVCを学ぶ。
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市場志向のフードバリューチェーン:フィリピン
第2のタイプである市場志向型の農家として、フィリピンの野菜農家とそのFVCを学ぶ。
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現代化したフードバリューチェーン:日本
第3のタイプである現代型の農家として、日本の農家とそのFVCを学ぶ。「現代型」の名称は一時的なものでしかなく、最終講義で、より本質に沿った名称に変更する。
Lecturers
/講師
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栗田英幸
愛媛大学 国際連携推進機構 准教授
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日本農業の課題 そしてその将来の可能性: 小規模農業はどうやって生き残るのか?日本農業の課題とその将来性
- 農村農業
- 食料自給率
- 大規模農業と小規模農業
日本農業の特徴について学ぶ
Videos
/学習動画
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農業・食料自給率の概要
日本の農業の特徴について学んだ後、農業と食料自給率が既に危機的な状況に直面している状況を統計データを通して理解する。
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小規模農業と大規模農業
小規模農業と大規模農業の特徴について学んだ後、大規模農業によって駆逐されてきている日本の農業の状況について統計データを通して理解する。
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小規模農業の可能性
愛媛県でのいくつかの事例を通して、小規模農業だからこそ可能な持続可能な農業の可能性について学ぶ
Lecturers
/講師
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栗田英幸
愛媛大学 国際連携推進機構 准教授
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笠松 浩樹
愛媛大学 社会共創学部 准教授
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地方政府と生産者協同組合のブランド化戦略
- 特異性商品
- ローカルマーケット
愛媛県の特徴について理解し、愛媛県産商品の売り場を歩き販売員から商品説明を受けながら、愛媛県の特徴を反映させた商品について学ぶ。
Videos
/学習動画
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市場理論と政府の役割
市場理論における政府の主な役割について挙げ、本講義で注目する地方政府の戦略に関係する項目について理解を深める
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愛媛県ブランド化の戦略
愛媛県庁職員の責任者から愛媛県のブランド戦略について学ぶ。
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生産者協同組合の戦略
日本に独特な農業生産者協同組合JAおよびその地方支部が地方の農業振興やブランド戦略に対して果たす役割について学ぶ
Lecturers
/講師
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栗田英幸
愛媛大学 国際連携推進機構 准教授
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日本農村の再活性化のための国家政策の枠組み
- 第6次産業化
- 農村振興
愛媛県の魅力を知り、その魅力を前面に押し出した愛媛県のミカンを通したブランド化戦略について学ぶ。
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/学習動画
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イントロダクション&農業政策の枠組み
農業・農村振興のための日本の政策的枠組みについて学ぶ
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第6次産業化:日本独自の戦略
日本独自の農業・農村振興策としての6次産業化について学ぶ
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日本のFVCを理解するのに重要となる日本文化
日本のFVCを理解する上で重要となる日本の3つの文化について理解する。
Lecturers
/講師
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栗田英幸
愛媛大学 国際連携推進機構 准教授
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愛媛の特産品、ブランド化とツーリズム
- 特産品
- ブランド化
- ツーリズム
愛媛の特徴と特産品を学ぶことで、愛媛県のブランド戦略と観光戦略について理解することができる
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/学習動画
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愛媛県と特産品
ツーリズムやブランド化を理解する上で、まずは愛媛県の特徴と特産品についての理解を深める
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市場散策
愛媛県の有名なツーリスト市場を訪れ、雰囲気に触れるとともに店員との会話や数多くの商品から愛媛県の特産品やその販売方法についての理解を深める
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ブランド物語の作り方
ブランド作成に重要な物語について学んだ後、その主要な幾つかのタイプについて理解を深める。
Lecturers
/講師
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栗田英幸
愛媛大学 国際連携推進機構 准教授
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道の駅1:からり
- 6次産業化
- ブランド化
- 直売所
道の駅の役割とその多様性について学んだ上で、試行錯誤により作られた道の駅カラリの仕組みを理解する
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/学習動画
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イントロダクション&道の駅とは
道の駅は、今や日本の観光文化を代表するユニークな施設として知られている。1990年代の試行錯誤の後に日本全土に急速に拡大している道の駅の歴史や役割、多様性を学ぶ
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内子町のからり
内子町を訪れ、内子町の魅力を知り、からりを訪れ、その代表からからりの成り立ちや役割について学ぶ
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フロンティアを切り開く原動力としてのからりの女性パワー
生産者代表の女性から、からりでの活動や過去の苦労、そして、現在の楽しみについて話を聞く
Lecturers
/講師
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栗田英幸
愛媛大学 国際連携推進機構 准教授
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道の駅2:アゴラマルシェ
- ブランディング戦略
- 6次産業化
- オーナーシップ
からりとは別の特徴的な道の駅アゴラ・マルシェの後発者故の効率的なシステムについて学び、からりと比較する
Videos
/学習動画
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八幡浜市の魅力
八幡浜市を訪れ、特産品のブランド化を理解するのに重要な八幡浜市の特徴と魅力について学ぶ
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みなっとのアゴラマルシェ
道の駅みなっとにあるアゴラマルシェを訪ね、責任者からアゴラマルシェのブランド戦略について学ぶ
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カラリとアゴラマルシェの比較
全く異なるシステムで大きな成功をおさめている2つの道の駅について比較し、その違いと理由、そして、共通する重要なポイントについて学ぶ
Lecturers
/講師
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栗田英幸
愛媛大学 国際連携推進機構 准教授
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三代目みかん職人:田舎の小都市からうまれたITADAKIブランド
- ビジネスマネジメント
- 企業家
家族農業から企業経営へ転換し6次産業化に成功する柑橘農家の事例を学ぶ
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/学習動画
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イントロダクション&ウェブ探索
三代目蜜柑職人のウェブサイトを訪れ、その商品やブランド物語について理解を深めることで、そのビジネスの概要と戦略について学ぶ
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三代目みかん職人インタビュー
三代目みかん職人の会社を訪ね、社長から成功を秘訣について学ぶ
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FVC分析
第1部、第2部の講義をもとに、FVCからその成功の秘訣について理解を深める
Lecturers
/講師
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栗田英幸
愛媛大学 国際連携推進機構 准教授
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マゼンタみかん 第6次産業化と愛とのつながり
- 特別なマーケット
- 6次産業化
- みかんチョコレート
生産者の柑橘に対する強い愛情と共感できる一部の消費者たちと強く繋がった市場戦略について学ぶ
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/学習動画
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マゼンタみかん紹介
生産者による講義からマゼンタみかんの活動や6次産業化を進めるようになった理由、生産者のみかんとチョコレートに対する思いを理解する
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愛が生産者と消費者をつなぐ
生産者のみかんとチョコレートに対する強い愛情、そして生産者の哲学を理解し、その感性を共有できる一部の消費者をターゲットとしたブランド戦略について理解する
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6次産業化の作業部屋訪問
生産者の6次産業化のための小さな作業部屋で、みかんパウダーを制作する過程を見学しながら、さまざまな工夫をこらした加工過程について学ぶ
Lecturers
/講師
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栗田英幸
愛媛大学 国際連携推進機構 准教授
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興居島1:2つのブランド化戦略
- 農協
- ブランド化
興居島を訪れ、離島という市場アクセスに不利な要因を魅力=利益へと転換する戦略について学ぶ
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不利を有利に転換する好事例としての離島
市場アクセスの不利な離島である興居島は、「不利な条件を有利に転換する」ブランド化戦略を理解する上で好事例である。分析の前提としての興居島と主要産業である2つの柑橘生産地域の特徴について学ぶ
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2つの農家と2つの異なる戦略
2軒の農家を訪ね、それぞれのブランド戦略についての話を聞き、大きなブランド利益を得られる理由について学ぶ
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2つの戦略分析
FVC分析により、2軒の農家を比較し、相違点と共通点から「不利な条件を有利に転換する」ブランド化戦略についての理解を深める
Lecturers
/講師
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栗田英幸
愛媛大学 国際連携推進機構 准教授
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興居島2: 観光地化真っ最中
- 離島ビジネス
- お金のためだけでなく喜びのため
興居島を訪れ、観光を楽しむことにより、その魅力を理解し、興居島に惹かれて店を興居島に移転した2人のオーナーに話を聞くことで、離島という不利な条件が魅力へと転換する具体的な事例を学ぶ
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/学習動画
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バーチャル訪問
興居島のツーリズムスポットを訪れ、興居島の魅力について学ぶ
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興居島の2つのビジネスを訪問
興居島という島の魅力にいち早く気づき、市場に有利な東京や横浜から興居島に生活の拠点を移して、コーヒー屋と地ビール生産を開始した2人から、興居島の魅力や可能性、今後の展望について話を聞く。試行錯誤の途中であるからこそ見える、彼らの悩みやこだわり、そして、頑張る原動力について学ぶ
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2つのビジネスの解説
コーヒー屋とビール屋を営む2人の経営哲学・戦略の相違点と共通点を通して、田舎の不利な条件を有利に転換するのに重要なポイントについて整理する
Lecturers
/講師
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栗田英幸
愛媛大学 国際連携推進機構 准教授
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フードバリューチェーン再訪
- 参加型開発
- 統合的フードバリューチェーン
- オーナーシップ
この講義では、参加学生が観察者でなくFVCの改善を促すFVCコーディネーターの立場に立つ。FVCの改善をコーディネートする上で役立つ多様性や参加者を重視する概念について学んだ上で、これまでの事例をFVC改善に利用しやすいようFVCの第2活動を修正する。最後に、海外の事例を元にFVC改善の為の提案を行う。
Videos
/学習動画
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いくつかの重要なコンセプト
FVCを具体的に利用するために重要となる2つの概念について学ぶ
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2次活動の修正
これまでの学びよりFVCの2次活動の要素を整理する
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新たなFVCを外国の事例に当てはめる
モザンビークやフィリピンでの新たな試みについて、修正したFVCをもとにして分析する
Lecturers
/講師
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栗田英幸
愛媛大学 国際連携推進機構 准教授
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私たち共通の未来のためのFVC再編
- 一体型FVC
- グローカル
講義に出てきたキーワードの理解と分析ツールの利用方法の理解度を試す試験を実施する。
Videos
/学習動画
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世界の緊急課題とフードバリューチェーン
世界の緊急課題を解決する上で商品を介したグローカルな関係主体全てを巻き込んだ関係性の再編成が重要であることを復習を通じて再確認する
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解決としてのFVC再編
これまで学んだブランド化のためのFVC再編を世界の緊急課題の解決方法として位置づけなおす
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最終作業
本講義の最終的な理解度を測るための最終課題について理解する
Lecturers
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栗田英幸
愛媛大学 国際連携推進機構 准教授
Staff/スタッフ
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栗田英幸愛媛大学 国際連携推進機構准教授経歴
1.2001/04-2003/09 愛媛大学 法文学部講師
2.2003/10-2014/03 愛媛大学 法文学部准教授
3.2006/04-2012/03 早稲田大学アジア太平洋研究センター 特別研究
4.2014/04-現在 愛媛大学 国際連携推進機構アジア/アフリカ交流センター 准教授
5.2014/06-現在 ルリオ大学 客員教授 -
栗田英幸愛媛大学 国際連携推進機構准教授経歴
1.2001/04-2003/09 愛媛大学 法文学部講師
2.2003/10-2014/03 愛媛大学 法文学部准教授
3.2006/04-2012/03 早稲田大学アジア太平洋研究センター 特別研究
4.2014/04-現在 愛媛大学 国際連携推進機構アジア/アフリカ交流センター 准教授
5.2014/06-現在 ルリオ大学 客員教授 -
栗田英幸愛媛大学 国際連携推進機構准教授経歴
1.2001/04-2003/09 愛媛大学 法文学部講師
2.2003/10-2014/03 愛媛大学 法文学部准教授
3.2006/04-2012/03 早稲田大学アジア太平洋研究センター 特別研究
4.2014/04-現在 愛媛大学 国際連携推進機構アジア/アフリカ交流センター 准教授
5.2014/06-現在 ルリオ大学 客員教授 -
笠松 浩樹愛媛大学 社会共創学部准教授経歴
1.2002/04-2010/03 島根県中山間地域研究センター 主任研究員.
2.2010/04-2011/03 島根県中山間地域研究センター 専門研究員.
3.2011/04-2011/10 愛媛大学 農学部助教.
4.2011/11-2016/03 愛媛大学 農学部講師.
5.2016/04-2022/09 愛媛大学 社会共創学部講師.
6.2022/10-現在 愛媛大学 社会共創学部准教授
Competency/コンピテンシー
科目の目標
本講義は、自然環境との相互作用を考慮に入れた小規模農家と消費者をつなぐ関係(フードバリューチェーン)の概念を通して、日本独自に発展させてきた産官学民をあげた地方におけるブランド化や6次産業化の試みを理解することを目的としている。
履修者の到達目標
1) 身の回りの興味のある商品に関して、フォード・バリュー・チェーンの中で把握し、持続可能性の観点から分析することができる
2) 日本の産官学民が一体化して推し進めるブランド化および6次産業化を通した地方の活性化戦略の手法について説明できる
3) 日本の産官学民が一体化して推し進めるブランド化および6次産業化を通した地方の活性化戦略の手法の意義や効果について説明できる
Information/その他の情報
教材・参考文献
・中野 健 2014. 日本の農業発展のための「第6次産業化」。立命館経済研究.LXⅢ巻 No.3・4
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=&ved=2ahUKEwjO3InMrYaEAxWHjK8BHQ-ZAbMQFnoECBUQAQ&url=https%3A%2F%2Fritsumei.repo.nii.ac.jp%2Frecord%2F1880%2Ffiles%2FE63_34nakano.pdf&usg=AOvVaw1IKTas-2gRlXXEnpMpMxnt&opi=89978449
・Udhayakumar, G. V. Et al . 2020. Farmers Producer Organization Driven Agri-Food Value Chain: Role of Actors and Strategies. LAP LAMBERT Academic Publishing
Contact/お問合せ先
〒790-8577
愛媛県松山市文京町3番
栗田 英幸
電話:089-927-9269
mail:kurita.hideyuki.mk@ehime-u.ac.jp




