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ヒロシマ被爆の実相 惨禍でのジャーナリストとアメリカ 核開発~知られざる実態を追って

人類史上初めて実戦で原子爆弾が投下された広島と長崎。しかし、被爆による死者数や被害の実態は、日本がアメリカ占領下となる1945年9月以降、日本で報道することが禁止された。占領政策に支障をきたすとの理由からだ。こうした中で、世界にいち早く発信したのがアメリカ人など欧米からのジャーナリストだった。占領軍の許可を得て現地に入った彼らは、その惨状を目にし、当局の反発を覚悟で実態を伝えていく。
従軍記者だったジョン・ハーシーは、1946年8月に「The New Yorker」誌で被害実態を初めて伝えた。アメリカ社会に衝撃が走り、「原爆投下でアメリカ兵100万人の命が救われた」という米政府の公式見解が作られていく。原爆被害の実相を伝えることはまた、ジャーナリズムの役割、体制側とメディア側との葛藤、個々人の良心とは何かを考えるケースとなる。
このプログラムは、被爆の発信に関して、日本の公共放送NHKの国際放送部門であるNHK WORLD-JAPANの番組映像を見ていき、ジャーナリズムの役割、米政府などの体制側の対応の虚実、個人の良心などの問題への理解を立体的に習得していく。

Content/学習内容

  • 原爆投下から80年を迎え、広島と長崎の被爆者が高齢化する今、被爆の記憶の伝承が叫ばれている。
    実戦での核兵器使用は、この2都市に限られるが、20世紀の冷戦期には、核保有国は実に2000回以上の核実験を行っている。核兵器の地上・地下実験、製造過程での事故等、核廃棄物などによって、実は放射線被害を受けている人(いわゆる“グローバル・ヒバクシャ(Global Hibakusha)”)が多数いることが、広島市立大学のロバート・ジェイコブズ名誉教授の研究で明らかになっている。彼らグローバル・ヒバクシャは、核保有国による絶え間ない核兵器の近代化によって生み出された存在である。

    核兵器の製造を可能にするため、米ソなどは、その原料となるウラン鉱石を世界各国に求めていった。巨大な核保有国・アメリカは、第二次大戦以降、アフリカにもウランを求めたが、その裏にはウランを扱う謎の商人の存在もあった。 核兵器を維持、増強するために世界各地で何が行われていたのか。そして、核兵器製造に関連する作業の中で放射線被害を受けたグローバル・ヒバクシャはいかなる経験をし、何を訴えてきたのか。広島、長崎だけではない世界的な視点で、核兵器を取り巻く国際状況と今日的な課題を考察していく。

  • Designated TV Programs: NHK WORLD-JAPAN "Mystery Man of The A-Bomb"

Staff/スタッフ

    • 講師
    ロバート・ジェイコブズ
    広島市立大学
    名誉教授
    • コンテンツ制作
    髙井 孝彰
    国立大学法人筑波大学 広報局
    次長

Competency/コンピテンシー

  • 想像力
  • 状況把握力

専門コンピテンシー

  • ジャーナリズム論
  • 歴史的事象に対する個人の良心

達成目標

  • 被爆の世界発信の実相を体系的に理解することができる。
  • アメリカ政府の原爆投下の正当化はどう形成されたのか理解できる。
  • 日本人以外の原爆犠牲者について理解し、被害と加害」の両側面への考察を行うことができる。
  • 原爆の惨禍に、ジャーナリズムはどう役割を果たしたか、理解することができる。
  • 個人の良心は、政治体制下でどう立ち向かえるか、事例的に理解できる。
  • 怒りと憎しみという戦争がもたらす敵と味方の感情にジャーナリズムがどう役割を果たすか理解できる。

Information/その他の情報

教材・参考文献

 

ヒロシマ被爆の実相-惨禍を伝えた外国人たち

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