国では将来が見えなかった、日本で自分の生活を作りたい。
これから日本へ留学する人へのエドワルドさんからのメッセージ
Eduardoさん
出身:ブラジル(ブレーヴェス)
2023年4月に神戸大学の研究生として来日。2023年10月に神戸大学大学院国際協力研究科に入学。
好きな日本の歌手は「春ねむり」、好きなアニメは「HUNTER×HUNTER」。日本の伝統文化にも興味があり、京都で鑑賞した能に感動。現在は、日本酒「福寿」の蔵元である「神戸酒心館」でアルバイト中。
ぼくは、ブラジルの北部、アマゾン川流域にあるブレーヴェスという町の出身です。ブラジルのアマパ―州にある国立大学で国際政治を専攻しました。卒業後、就職がうまくいかなくて、ベレンにある国立大学のコンピューターサイエンスの学部に転部しました。でも、数学やプログラミングなどが好きになれなくて、すごく辛かったです。その時に、ベレンの領事館で日本のMEXT1) の奨学金に応募できると知って、応募しました。
実は、最初の試験は面接で失敗してしまいました。ちょうど東京オリンピックの年だったので、東京オリンピックのニュースばかりで、ニュースを見ると、「あー、失敗したー!」って面接のことを思い出して、すごく苦しかったんですが、次の年にもう1回挑戦して合格しました。それで、2023年4月に神戸大学の研究生として来日して、10月に修士課程に入学しました。
1) Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology(日本の文部科学省)
アマゾンの環境問題、特に森林の「deforestation2) 」について研究したいと思っています。指導教官の先生に「まず、世界中の森林ガバナンスや、国際森林組織の枠組みについて調べましょうか」とアドバイスをいただいたので、今はそれについて調べています。国際関係というと、メインストリームは戦争やコンフリクトですが、ぼくは「故郷のアマゾンのために何かできることがないか、そうだ、森林ガバナンスのことができる!」と思って、それを研究にしました。
2) deforestation:森林伐採や森林の減少

「アマゾン川のあるブラジルの北部地域はすごく貧しい、勉強することで生活のクオリティーを上げたい気持ちもあった」(神戸市の須磨海岸で、提供:エドワルドさん)
ぼくは、日本のMEXTの奨学金に応募して来日することができました。試験は英語と日本語がありました。その時、日本語能力は全然なかったんですけど、英語能力、TOEFLとか、英語の資格などを身に付けました。それから、最初の試験は、もう言いましたが、失敗しました。すごく気分が沈んでいたんですが、「やっぱり日本に行きたい、そのためにどうしたらいい?」「来年も試験を受けてみよう、じゃ、どうしたらいい?」 って考えるようにしていました。合格するためには、資格とか能力も大事なことなんですけれども、自分の考え方やメンタルヘルスをキープすることもすごく大事だと思いました。
JLPT3) 3)は、去年の7月の試験を受けて、9月に合格しました。点数はギリギリだったんですけどれも、あの、正直ちょっと驚きました。「絶対に失敗する」「絶対に落ちた」と思っていて、でも、聴解セクションに助けられました(笑)。文字・語彙や読解は、すごく難しかったです。
聴解の勉強は、Spotify4) のアプリを使って日本語のPodcast5) をよく聞いていました。おすすめは、「YUYUの日本語Podcast6) 」です。初心者には最初は難しいと感じるかもしれませんが、最後まで頑張って聞いてみてください。例えば、「ありがとう」って、あの、外国の方だと、「り」が英語っぽい発音になりますが、日本人っぽい発音というか、そういう日本語のアクセントが自然に身につくと思います。
3) The Japanese-Language Proficiency Test, JLPT(日本語能力試験)(https://www.jlpt.jp/)
4) Spotify(https://www.spotify.com)
5) Podcast:インターネットで配信される音声コンテンツ、ニュースや教育など多様なジャンルがある
6) YUYUの日本語Podcast:メキシコ在住の日本語教師がホストを務める、日本語を勉強している人のためのPodcast(https://youtube.com/@yuyunihongopodcast?si=yeBTtzGlvCqrF58a)
やっぱり発音のことですね。たとえば、はし、箸と橋と端、 chopsticksは「は(↑)し(↓)が(↓)落ちた」、bridgeは「は(↓)し(↑)が(↓))落ちた」、edgeは「は(↓)し(↑)が(↑)落ちた」。全部違います。日本語はブラジルで自分で勉強したんですけれども、日本に来て、神戸大学のGEC7) で漢字の授業を受けました。その時に先生に教えてもらいました。
漢字にもすごく興味があります。ちょっと時間がかかるんですが、漢字の「へん」とか「つくり」とか8) 、部首といいますか? 書きながら、自分でマインドマップします。たとえば、神戸市灘(なだ)区の「灘」は、「さんずい」と「難しい」です。ほかにも「寺」という字は、「侍」や「待つ」という字、時間の「時」や、特別の「特」もありますね。ちょっといいですか?(紙に「侍」「待」などの漢字を書きながら)このようにマインドマップして覚えています。
7) Global Education Center(神戸大学教育推進機構グローバル教育センター)
8) 「へん」や「つくり」は漢字の部首の種類
漢字の勉強には、フラッシュカード「Anki9) 」を使っています。(スマホの画面を見せながら)他の人が作ったフラッシュカードがあるので、これを全部ダウンロードして、一番最初は、この「Japanese Core 2000」で勉強しました。たとえば、これは「美しい」という漢字です。「この絵は、美しいです」という例文があって、イラストもあるので覚えやすいです。
SpotifyやYouTubeも、楽しみながら勉強できるのでいいと思います。ただ、日本のマンガやアニメはちょっとおすすめしません。特に少年マンガやアニメですね。難しいからではなく、友達の中で使うのは大丈夫だと思いますが、他の人に「おれ10) 」とか使ったら、「おれの力、見せてやろう」とか(笑)、すごく失礼なので、避けたほうがいいと思います。
9) Anki(https://apps.ankiweb.net/)
10) おれ:主に男性が友達や仲間同士で使う一人称
神戸大学のGECを通じて知り合った、シニアのボランティアの方と友達になって、京都に能を見に行きました。能は、歌い方とか、いろいろな物語、ちょっと名前を忘れてしまったんですけど、笑い話とか、すごく面白かったです。
日本の料理も好きです。今は、神戸酒心館という、日本酒の蔵元でアルバイトをしています。「福寿」というノーベル賞のパーティーで使われているお酒の蔵元です。お客様に日本酒について説明したり、試飲をすすめたりしています。外国からのお客様もいらっしゃるので、この仕事は本当に楽しいです。

日本酒「福寿」の蔵元、神戸酒心館には世界中から観光客が訪れる

先輩から紹介されて始めたアルバイト、日本酒の知識はインターネットなどで勉強した

海外からのお客様には英語やポルトガル語で、日本人のお客様には日本語で接客する
困ったことは、来日したときに東京から神戸へ行く計画に失敗したことです。夜行バスに乗りたかったんですけど、満席で、真夜中に東京駅でひとりぼっちで、すごく心細かったです。プランBに切り替えて、羽田空港から飛行機で行こうとしたんですけど、もう深夜だったので空港までの電車がなくて、品川からはタクシーに乗りました。結局、ブラジルから神戸に着くまで4日間かかりました。すごく疲れました。
あとは、去年、横浜にライブを見に行って、そこで、あるシニアの方と友達になりました。一緒にライブに行ったり、食事に行ったり、レストランの人に「日本の母です」「ブラジルの息子です」って言うくらい大切な友達でした。でも、カルチャーショック、文化的な衝突かな? 小さいことがいろいろ積み重なって、その友達を失ってしまいました。日本の方の考え方もわからなくて、「どうして怒っているか教えてください」と聞きましたが、「自分で考えなさい」って言われて……。仲直りしたかったんですけど、バイト先のお酒も送りたかったんですけど、今はもうLINEもメールもしない感じです。それは本当に悲しかった、残念だったことです。
将来の計画は、進学か就職か、二つの道があります。うーん、博士課程はすごく大変だと思いますけど、魅力があります。もし、進学のチャンスがあれば、頑張りたいです。もし、今のアルバイト先(神戸酒心館)で正社員になれるチャンスがあれば、挑戦したいです。今は、まだ何も決められないです。
正直にいうと、ブラジルに帰りたくなくて、日本に住みたい気持ちがあります。ブラジルには家族がいますが、ブラジルでは仕事がなかった。何も持っていなかった。日本で自分のことを、生活を作りたいです。

日本語で勉強するのは確かに大きな冒険ですね。 新しい国、新しい文化、新しい言語に挑戦するのは大変そうに見えます。ですが、そんなに心配しないでください。 あなたは一人なわけじゃないですよ。
ぼくからのアドバイスは、日本語を大事にしてください。 例えばなんですが、ぼくの授業は英語で日本語能力がいらなかったんです。 しかし、日本にいれば日本語で話さないといけないと思います。 その考え方を持ってきました。
ですが、よくわかりますよ。 ぼくも、あの、最初は日本語に不安を、日本語のことですね、非常に感じていますよ。 恥ずかしくて間違えたくなかったんですが、日本の方はとても親切で、自分の努力を理解し、サポートしてくれるでしょう。自分のペースで徐々に日本語が上手くなるよ! それは間違いないと思います。
留学生として、日本の生活で困っているところが、いっぱいかもしれませんが、一方で、逆に日本の良いところ、素晴らしいところもいっぱいですよ。 それも楽しんでください。 日本の神社とか、文化とか、特に料理とか、ぜひ日本の、自分の好きなものを楽しんでください。 最後にですね、来日した時に必ず自信を持って挑戦してみてください。 あなたなら絶対にできますよ。
Eduardoさん、インタビューへのご協力ありがとうございました。
※インタビュー内容は、本人の了承を得て、一部省略・修正している箇所があります