日本人との会話のきっかけは自分から、友達ができて楽しくなっていった。
これから日本へ留学する人へのメイリスさんからのメッセージ
Meylis(メイリス)さん
出身:トルクメニスタン
2019年11月に東海大学の別科(予備教育課程)に入学。コロナによって1年遅れの2020年に別科の授業がスタートし、2021年9月に修了。2021年の10月に東海大学の建築学科に入学。
東海大学では美術研究会に所属、また、多文化共生プロジェクト「TICC(Tokai International Communication Club)」のメンバーとしても活動中。趣味はロードバイク。
はい、日本では地震が多いので、最新の建築の技術や耐震構造があります。トルクメニスタンにもたまに地震があるんですが 、その時はめちゃくちゃ、なんていうか怖いです1) 。なんで日本では毎日地震が起こっているのに、高い建物があるんだろう?どうやって造っているんだろう?と興味がありました。それで、日本で建築を勉強したいと思いました。
1) トルクメニスタンは地震の発生リスクの高い地域であり、1929年、1948年、2000年に大規模な地震が起こっている
日本に来る前から、スカイツリーがすごいなと思っていました。この間もYouTubeでスカイツリーの動画を見て、またすごいなと思いました。なぜなら、大きな地震があっても、日本で一番安全な場所だと言われているからです。スカイツリーの真ん中には、揺れに強い心柱(しんばしら)というものがあって、その下は免震構造になっています。なので、震度7くらいの地震がきても、大丈夫なんだそうです。

最近の楽しみは自転車のカスタマイズ「日本に来てはじめてロードバイクに乗って、速い!と思って、ロードバイクが好きになった」(提供:メイリスさん)
今は、トルクメニスタンの近代建築史について研究しています。最初の3年間でいろんな授業をとってみて、設計にも興味がありましたが、研究室を選ぶときに、論文を書くとしたら日本語で書かなければならないので、私には時間がかかるかもしれないと言われました。
今の研究室の先生は建築史が専門です。イギリスへの留学経験があって英語で指導をしてもらえるので、その先生の下で研究することになりました。先生は建築物のスケッチを描(か)くんですが、「建築を学ぶときは、手を動かさないと頭に入らない」という考え方とか、教え方も自分に合っていると思います。もともと私も絵を描くのが好きで、建物をただ見てスマートフォンで写真を撮るだけじゃなくて、手を動かして実際に描いたら、もっと深く理解できるし、覚えやすいんじゃないかと思っています。
私はトルクメニスタン政府の奨学金プログラムの試験を受けました。その試験を受けるためにはTOEFLやILETSの点数が必要でした。私は2019年、高校生のときにTOEFLの試験を受けて、政府の試験にも参加して合格しました。
プログラムには海外大学のトップ1000のリストがあって、トルコもアメリカも韓国も、マレーシアもUAEもドバイもありましたが、ほとんどの大学は試験の申し込み期間が終わっていました。それで申し込めるところには全部申し込んで、最終的に東海大学から「Acceptance Letter(入学許可証)」がもらえました。

東海大学の別科(予備教育課程)です。 2019年に入学したのですが、コロナの影響などで1年遅れたので、その期間は自分でインターネットからダウンロードできる本や教科書を使って、ひらがなやカタカナ、簡単なフレーズなどを勉強しました。日本の映画やドラマを見たりもしました。
別科の勉強は日本語だけじゃなく、日本の大学に入学するために必要な物理や数学もありました。そこもちょっと苦労しました。日本語は、中級ぐらいのレベル、大学に入れるぐらいのレベルまで勉強しました。それも苦労した、とは言えます。
まず、漢字が難しいと思います。あとは、敬語の使い分け、日本語の曖昧さにも難しいところがあるかなと思います。
簡単な漢字ぐらいなら、読んだり書いたりできるんですが、日本人みたいには、自信ないです。敬語は、私は外国人留学生なので、日本人みたいに敬語を使いなさいというプレッシャーはそんなにないんですが、もちろん、使うところでは使うようにしています。
曖昧さは、たとえば、日本人は直接に言わないです。断る時とか「それは、ちょっと……」で終わっちゃうんですが、相手が傷つかないように遠回しに言っちゃうのは日本人にとっては当たり前のことだと思いますが、でも多分、外国人にとっては直接言ったほうが早いです。
別科での日本語の授業は最初オンラインだったのですが、「まるごと+(まるごとプラス)」2) というオンラインコースの教え方、学び方が楽しかったです。あとは「みんなの日本語」3) という教科書もいっぱい使って勉強しました。
アプリとしては、一番有名な「Duolingo」4) が楽しく学べると思います。「HelloTalk」5) というネイティブの人と会話ができるアプリも便利だと思います。
2) まるごと+(まるごとプラス):https://marugotoweb.jp/ja/index.php
3) みんなの日本語初級Ⅰ 第2版本冊:https://www.3anet.co.jp/np/books/2300/
4) Duolingo:https://ja.duolingo.com/
5) HelloTalk:https://www.hellotalk.com/ja
大学のサークル活動や、大学の学園祭が印象的でした。私は、TICC(Tokai International Communication Club)というサークルに入っていて、それはボランティアみたいなクラブで、いろんなことをやってます。メインは留学生サポート、国際交流、外国にルーツのある子どもたちの手伝いとかです。秦野駅の近くの公民館で、ニコニコティーチングという活動があって、週1回、子どもたちの宿題とか一緒にやったり、あとは日本語や英語を教えたりしています。学園祭ではTICCのブースを出して、みんなでチョコバナナを作って売りました。私は売る係で、お客さんたちに対応するのが忙しかったんですが、楽しかったです。
TICC以外にもう一つ、絵を描くサークルに入ったんですが、美術研究会というサークルです。週に1回ぐらい行って、自分の好きな絵を描いたり、年に何回か展示会もあって、自分が描いた絵を出したりしています。
それ以外は、友達と旅行したり、いい時間を過ごしたり、それもいい思い出だと思います。旅行で一番印象に残ってるのは、冬休みにトルクメニスタンの先輩たちと車で大阪に行ったことです。運転できるのは先輩が一人なんで、足が疲れるらしくて、だから途中で停まったり、泊まったりで、3日ぐらいかかりました。「大阪に行ったこと」が思い出で、大阪での思い出はなにも、そんなに観光した記憶はないですね(笑)。

地元の祭りではトルクメニスタンのブースを出展、トルクメニスタンの伝統的な衣装を着たメイリスさんと大学の先輩のメカンさん(松田町観光協会主催のまつだ観光まつりで、提供:メイリスさん)
日本人だけではなく、他の留学生たちとの出会いとかも良かったと思います。あとは、自分の考え方が、世界を見る目が前と違って広がったと思います。それは一番良かったことです。今の、最新の建築を実際に見たり、その技術に触れることができたりしたのも良かったです。
日本人の礼儀正しさだと思います。相手を傷つけないようにする言葉遣いが素晴らしいと思います。あとは、電車やバスが時間通りに動くのは、めちゃくちゃいいと思います。
困ったことは、多分、日本語が十分に理解できていなかったことだと思います。悲しかったことは、来た時にホームシックになって家族に会いたかったことです。どこでも日本語、漢字ばっかりなんで、なんで日本に来たんだろう、みたいに思っちゃって。
来た時もそんなに会話できるレベルではなかったので、一日話さない日とかいっぱいあって、スーパーで一日一言「袋、入れますか?」「大丈夫です」だけで終わります。
その時はコロナで全部オンラインで友達もあんまりいなかったです。最初は寂しかったんですけど、対面の授業が始まって、そこからサークルに入ったり、友達もいっぱい作って、自然に楽しくなっていきました。

向こうから話しかけてくれた人もいれば、私から話しかけるのもありました。めちゃくちゃ分かったことは、日本人は恥ずかしいのかな?よくわからないんですが、向こうから話しかけてはこないです。日本人にもよるんですが、自分が動かないと日本人はなにも言わないです。
でも、話したいのは私なので、じゃあ、仕方なく私から、 「天気がいいですね」みたいに声をかけて「これは、なんですか?」みたいな質問して会話を始めて(笑)、コミュニケーションは大事だと思います。別科の授業はとても役に立ちました。
卒業後は国に帰って、トルクメニスタンの建築省で働くことになっています。奨学金プログラムのスポンサーです。将来は、建築の分野で国際的なプロジェクトに関わりたいと思います。特にトルクメニスタンと日本の技術を結びつけて、なにか価値のあるものができたらいいなと思います。
私のこれから日本へ留学する人へのアドバイスは、ちゃんと日本語の勉強をしっかりすることです。日本語の勉強を十分にしておくと、これから日本での勉強や生活がスムーズになります。それから、コミュニケーションをすることが大事だと思います。 たとえば、日本に来て、日本人とコミュニケーションをして、声かけてみて、話をして、友達になって、それから、日本人のことを理解することができます。
それ以外にも、日本の現地の文化や祭りなどに興味をもって参加することがおすすめです。それをすることで、もっと日本の文化や、日本人のことを理解することができます。それで、人とのつながりを大切にすることが大事だと思います。
Meylis(メイリス)さん、インタビューへのご協力ありがとうございました。
※インタビュー内容は、本人の了承を得て、一部省略・修正している箇所があります